サイバー攻撃関連
今週のセキュリティニュース - 2025年7月11日
はじめに
情報化が進む現代において、私たちのデジタル資産は日々巧妙化するサイバー攻撃の脅威に晒されています。国内では多要素認証(MFA)の普及が進む一方で、基本的なセキュリティ対策の不備を突かれるケースも依然として多く見られます。
数日中に報告されたニュースやレポートの中から、注目すべきインシデントを国内・国外それぞれピックアップし、手口や影響、対策の動きなどを紹介します。
目次
専門家が解説!今週のサイバーセキュリティの脅威と対策のポイント
増加するサイバー攻撃、中でもIDベースの攻撃が増えており、ID/パスワードによる認証方式は限界を迎えています。国内では証券口座への不正アクセスが社会問題化し、MFAの必須化が進む一方、以下の県立図書館の事例に見られるように、ID/パスワード窃取や更新プログラム未適用になり攻撃を許してしまうケースも少なくありません。
多要素認証(MFA)とは国外の調査によると、「Tycoon 2FA」などのフィッシングツールが安価に出回り、企業の認証情報が執拗に狙われていることが判明しています。これらのツールを使った攻撃はグローバルに展開されており、日本の企業も例外ではありません。さらに主に金銭を狙う攻撃者集団「Scattered Spider」の例では、標的型フィッシング・MFA疲労攻撃・電話/SMSなりすましといったソーシャルエンジニアリングの手法で、人間の心理的な隙を巧みに突いてきます。
IDベースの攻撃は利益率が高いため、今後も同じような手口の増加は免れません。こうした現状を踏まえると、デバイス証明書認証やパスキーなどのフィッシング耐性の高い方式への移行は急務です。ID/パスワードによる認証方式から完全に置き換えることで、IDベースのサイバー攻撃に対する強固な防御が期待されています。
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「証券口座への不正アクセス対策でMFA必須化へ、フィッシングに強い認証とは
日本経済新聞の報道によると、相次ぐ証券口座への不正アクセス問題を受け、口座へのログイン時や出金時に生体認証など高セキュリティな多要素認証(MFA)を必須とするガイドラインの見直し案を示しました。
しかし、従来のMFAをすり抜けるリアルタイムフィッシングが新たな脅威となっています。こうした状況の中で注目されているのが、公開鍵暗号方式に基づいたパスキー(FIDO)認証や証明書認証です。これらの認証方式は、認証情報を利用者の端末に安全に保管し、正規サイト以外では認証が成立しない仕組みになっています。そのため、フィッシング詐欺に非常に強く、利便性も高いのが大きな特徴です。
証券口座に限らず、利用するあらゆるシステムで不正アクセス被害を未然に防ぐためには、MFAの設定が可能な場合は積極的に活用していくことが求められます

県立図書館、不正アクセスから復旧しホームページを再開
県立図書館は、5月末に発生した不正アクセスによるホームページへの書き込みを受け、閉鎖していたホームページを、安全対策の完了に伴い7月上旬に再開しました。
不正な書き込みは海外サーバー経由で計3件行われ、ホームページ管理ソフトへのID・パスワードの総当たり攻撃や、更新プログラムの未適用が原因であったとのことです。管理用アカウントのID/・パスワードが漏洩した可能性が高いものの、その手段は特定に至っていないとしています。
図書館はサーバーデータの完全消去とシステム再構築を実施。従来のセキュリティ対策を総点検し、アクセス制限の強化などの対策を講じたとのことです。今後は不正アクセスの監視を強化し、定期的なセキュリティチェックを徹底するとしています。

国外の主なインシデント
従業員認証情報狙いのサイバー攻撃が急増 - eSentire調査
サイバーセキュリティ企業であるeSentireの調査によると、2024年から2025年第1四半期にかけて、従業員のログイン情報を狙ったサイバー攻撃が2023年と比較して156%も急増し、同社調査案件の59%を占めています。
この背景には、「Tycoon 2FA」のようなフィッシング・アズ・ア・サービス(PaaS)プラットフォームの普及があります。これは、月額200〜300ドル程度で提供され、Microsoftアカウントの認証情報やセッションCookieを窃取し、ビジネスメール詐欺(BEC)を容易にします。攻撃者はこれにより請求書の内容をを改ざんし、企業からの送金を自らの口座へ誘導するのです。
さらに、「Lumma Stealer」のような情報窃取型マルウェアは、わずか10ドルで大量の認証情報が手に入り、収集したデータを自動で分類・識別する機能によって悪用を加速させています。FBIによると、BECは2013年以降30万件以上確認されており、その被害総額は550億ドル(約8.4兆円)にのぼります。

サイバー犯罪グループ「Scattered Spider」の脅威拡大 - Check Point 調査
サイバーセキュリティソリューションを提供するCheck Pointの調査によると、サイバー犯罪グループ「Scattered Spider」が、一般的な企業に加え航空業界への攻撃も標的にしていることが明らかになりました。2025年7月にはカンタス航空の600万人分の顧客情報が流出する事件が発生し、多要素認証(MFA)疲労攻撃やボイスフィッシングといった同グループの特有の手口が確認されています。
Check Point Researchは、企業ログイン画面を模倣したフィッシング用ドメインを約500件特定し、航空・小売・医療・金融など他業種に渡る攻撃準備の兆候を警告しています。
Scattered Spiderは2022年頃から活動しており、主に米英の若年層で構成されています。金銭目的でランサムウェア、認証情報窃取、クラウドインフラへの侵入を狙い、SIMスワップ、MFA疲労攻撃、リモートアクセスツールの悪用など、高度な手法を多用しています。

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